評価され続ける海外プロジェクト

評価され続ける海外プロジェクト

醤油、味噌、清酒、焼酎、調味料など

日本の伝統食品は、今や世界各国で親しまれている。


健康食志向の高まりに伴い巻き起こった海外での日本食ブームは、一時の流行りではなく、確実に定着しつつあるのだ。

米国においては、日本食レストランが日系人や日本人向けであった従来の状況から大きく変化し、今では来店者の多くが米国人となっている。これは、米国に限った現象ではない。ますます日本食は注目され、料理の内容も、従来の「テンプラ」、「スキヤキ」などから、日本の伝統的な素材や調理法に対する関心が高まっているのだ。
座談会_海外プロジェクト

美味しさは国境を越えて

現在、海外営業部に所属し、韓国やタイ、マレーシア、シンガポール、ベトナムなどで営業活動をしている、姜(かん)は語る。
「日本食における一番の評価は、安全性があるということです。また、健康的で味が濃くないので食べやすく、口に合うと言われています。私は海外出張中、休日になると、現地の市場や食堂に出向き、現地の人々の生活を観察したり、実際に食事をしたりします。アジアでは、日本の醤油を食堂で見ることができます。何故置いているのか?と尋ねたところ、味が良いため現地の方たちも良く使うのだとか。また、韓国では、寿司が人気です。現在では、価格も手ごろになり、広く一般市民も食べているようです。私自身、日本食は大好きで、寿司やお刺し身、お好み焼きなどを良く食べますね。」

また、製造部のプラントグループに所属し、海外案件に携わる中山は語る。
「私がタイの案件で現地にいた時のことです。街には日本食レストランが多数あり、ラジオでは日本食レストランのCMが流れていました。コンビニでお茶を買ったのですが、中に砂糖が入っていましたよ。日本食もタイ人の嗜好に合せながら受け入れられているんだな、と感じました。」

世界30カ国に広がる醸造機械

フジワラテクノアートは、1967年、日本食文化の普及を目指していち早く海外への事業展開に着手した。韓国を皮切りに、米国、フランス、オランダ、キューバなど世界30数カ国に各種醸造機械やプラントを輸出している。
勤続20年以上になる中山は語る。
「私が入社当時(1986年)は、年に数回、直属の上司が海外へ出張に出ていました。海外需要が少しずつ増え始め、バブル時には頻繁に海外輸出用の機械を制作したのを覚えています。」

フジワラテクノアートへの依頼は、日本の醸造メーカーばかりでない。海外案件のエンジニアリング設計を行なう西村は語る。
「私が関わったブラジルでの仕事は、日系ブラジル人が経営している海外企業でした。醤油製造設備の案件でしたが、ブラジルの醤油は大豆とトウモロコシの粉で作るんです。日本の大豆と小麦の粉で作る醤油とは微妙に味わいが違います。現地調査に始まり、設備のレイアウトや機器の段取りについての打ち合せなど、長期にブラジルに滞在し、納入まで関わらせていただきました。」

また、タイでは中山が海外企業からの案件を担当した。
「お客さまは、タイ国内でNo.1の生産量を誇る醤油メーカーでした。約3ヶ月間滞在し、圧搾設備の据付~試運転を行ないました。スーパーバイザーとして関わっていましたので、品質管理や工程管理、据付指導はもちろん、時にはドリルの研ぎ方など、機械製作に関わる基本的なことも指導していました。」

現地ではもちろん日本人以外のスタッフと関わることも多い。日本の常識が通じなく苦労することもある。
どのように仕事を進めていくのだろうか。中山は語る。

「私がタイの案件を担当した時のことです。タイの人は日本人と同程度の英語だよと聞いていましたので、タイ語を事前に勉強して行きました。また、機器の製作は、プラントのコアとなる部分を日本(フジワラテクノアート本社工場)で製作し、付帯機器はタイで製作したものを据付、という流れです。現地に行く前に工程表の作成をし、現地ワーカーの要請や重機・工具・治具などの手配をします。重機や工具などの道具の手配は写真入りでお願いしました。名称だけでは、全く違う工具が用意されていることがあります。また、日本にはあるがタイには無い工具もあったりするのです。さらに、いい仕事をするためには現地の人とのコミュニケーションをいかに円滑にとるかということも重要です。言葉の問題だけでなく、国民性にあわせた仕事方法も調べました。タイ人のワーカーは、人前で叱咤されるのを極端に嫌うんですよ。」

西村も語る。
「ブラジルでは、言葉の壁を埋めるまでの会話には至らなかったものの、挨拶などの簡単な言葉を早く覚え、コミュニケーションを図りました。ブラジル人ワーカーはとても陽気で、仕事はきっちりこなします。休みの日には、一緒にホテル周辺のデパートなどに行き、ショッピングを楽しんだりしましたよ。」

ひとつの設備を完成させるまでには、数え切れないほどの問題にぶつかる。それをフジワラテクノアートのスタッフはこうしてひとつひとつクリアしていくのだ。

評価される技術とサポート

無事に機器設備の納入をした後もフジワラテクノアートの仕事は続く。
優れた機械はそれを使いこなすことができてようやく本領を発揮するからだ。そのサポートがきちんとできるのも、フジワラテクノアートが、設計、製造、据付、試運転までをトータルに自社で行なう体制が出来ているからであろう。
フジワラテクノアートは、仕事とは社会から与えられるものだと考えている。だからこそ、「良い仕事」をして社会に送り出す使命があるのではないか。この「社会」とは、日本ではなく「世界」を指し示している。フジワラテクノアートは、醤油や味噌などの最終商品をつくっているわけではない。しかし、醸造・食品機械の開発や製造を通して、世界中の消費者に「安全で美味しい食卓」を届けているのだ。

技術営業部の姜は語る。
「海外の場合、まだまだ伝統的な古い方法で醸造食品を作っている工場が多いので、大量の商品をつくる時は大勢の従業員を雇用する傾向にあります。しかし、人件費等の問題が出てくる。また、衛生面での問題もあります。今後は自動化可能な設備への需要や衛生的で安全な生産環境を求める傾向が高まってくると予想しています。すべての工程のデータを科学的に管理できる設備の依頼なども考えられますね。」

今後の需要に関して西村も語る。
「今後は、中国市場での需要が大きい。姜を中心に、積極的にリサーチをしていくことでニーズやウォンツをくみ取れば海外での需要は十分に考えられる。今まで以上に体制を整え、様々な国での実績を積み、需要拡大を計っていく段階にあると考えています。醤油以外にもタイにはナンプラーがあります。フジワラテクノアートが長年関わり研究・開発・製造を行なってきた「醸造・食品機器・プラント」技術を様々な分野へ応用していくことも可能なのです。」

美味しい食卓を届けるために

日本食の動向を直接的に示す公的な統計資料は存在しないが、日本食文化が「日常食」として世界に広がっているのは事実である。最後に三人に今後のビジョンについて聞いてみた。
姜は語る。
「普段の生活では出会うことのない多くの外国の人と出会い、コミュニケーションをとれることが面白いです。さらに、外国の食文化にフジワラテクノアートの製品が貢献できることと、日本食の海外進出にも期待しています。」

西村は語る。
「文化、言葉の違いはありますが、異文化に触れながらの仕事は、新たな発見が多いです。私の場合、海外での経験は人生観が変わると思われるほどの影響を受けることがあります。海外から日本を見る機会もでき、いろいろと考える時間もあります。今後も様々な方と接する機会が持てればと思っています。」

中山は語る。
「私たちの仕事は常に変化します。設計も製造もいつも同じことをくりかえして行なう仕事ではありません。お客さま、協力業者、営業、設計など、関わる人々の考え方もそれぞれ違います。機械の仕様、据付場所、工期期間も違います。海外での仕事は、日本の常識が通じなく苦労も多いです。しかし、これらひとつひとつを考慮しながら、みんなが満足のいく仕事が出来た時の達成感は非常に大きいものです。海外へも交通の便がよくなり、とても身近になってきました。日本のお客さまと同じようなサービスが海外でも提供できるようになればいいなと考えています。」